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本研究では、ガリウム(Ga)とヒ素(As)からなる半導体単結晶の縦波光学フォノンを考察対象として、エネルギー準位における振動準位および電子準位に焦点を当てた新たなモデルを考え、位相と偏光を制御した2つの光パルス照射によって起こる光応答過程を計算した。照射により生成された縦波光学フォノンの振動振幅を、パルス遅延時間の関数として求める手法を取った。この計算によって得られた電子とフォノンの干渉の割合と形状を検討したところ、干渉のあり方が照射される光パルスの偏光角度と結晶方位に依存していることが明らかになった。特に、直交偏光でパルスの一方を、Ga原子同士を結ぶ方向に平行な[100]方向にすると、パルス照射で生じる光による干渉の影響なしに、電子における量子干渉を観測できることを示した。
*透明領域でダイヤモンド光学フォノンの光制御を再現 (2020年6月)
https://www.titech.ac.jp/news/2020/047084
東工大ニュースリンク
概要:透明領域の超短パルス光を用いたコヒーレント光学フォノンの量子状態を制御する理論モデルを構築した。さらにダイヤモンドを用いた実験を行い、光干渉とフォノン干渉の実験結果を再現することに成功した。振動準位および電子準位で構成される系において、励起光パルス対の重なった時間領域についても光応答過程を計算することで、透明領域での光を用いてコヒーレント光学フォノンをコヒーレント制御する理論モデルを新たに構築した。この理論モデルには任意の光電場波形の取り扱いも可能である。構築した理論モデルを検証するため、フェムト秒(fs)以下の時間幅を持つ近赤外光パルスにより、ダイヤモンドコヒーレント光学フォノンの量子状態の制御実験を行った。励起パルス対の重なった時間領域に対しても実験を行い、光干渉とフォノン干渉を観測した。この結果は理論モデルから計算される結果と良く一致することを確認した。
*超短パルス光を用い固体中の量子経路干渉を観測 (2019年5月)
https://www.titech.ac.jp/news/2019/044341
東工大ニュースリンク
概要:超短パルス光照射をした半導体結晶中で、光遷移過程の量子経路干渉による電子コヒーレンスの崩壊と復活現象が起こること、不透明領域においてもコヒーレント光学フォノン生成に誘導ラマン過程が支配的であることを明らかにした。
高精度に時間制御したフェムト秒パルス対を半導体単結晶(n型GaAs=ガリウム・ヒ素)に照射し、発生するコヒーレント光学フォノンにより変化する反射率を実時間計測した。数十アト秒精度でパルス間隔を変化させることで、電子・フォノン状態の量子重ね合わせ状態をアクティブに制御することに成功し、電子コヒーレンスの崩壊と復活現象を観測した。また、コヒーレント光学フォノン生成の素過程に関する量子論に基づいた理論計算と比較することで、観測された電子コヒーレンスの振る舞いは、誘導ラマン過程によることを示した。今回の研究により、固体中における高精度の量子状態制御が可能になると期待される。